「紆余曲折を経て糖尿病学の道に」

谷澤:本日は山口大学医学部の大先輩でいらっしゃいます加来浩平先生にこれまでの歩みを伺い,若手の先生方を元気づけるようなお話をいただきたいと思います。先生は活力溢れる団塊の世代にあたりますが,お生まれは確か炭鉱の町と伺っております。

加来:炭鉱華やかなりし頃の福岡県筑豊地区に生まれました。父も一時は炭鉱を経営していたと聞いていますが,身内に医師は1人もいませんでした。

谷澤:そのような環境のなかでなぜ医学部を選ばれたのでしょうか。

加来:実を申しますと,丹下健三氏が設計された近代的な建築物の素晴らしさに衝撃を受け,元々は建築家に憧れて理系を選択したのです。ところが,高校3年生になる頃に進路指導の先生から,おそらくは医学部への進学者を輩出すると学校の評価につながるということで医学部を勧められたのです。父親も建築家を目指すのではなく,医学部に進むほうがよいのではないかという意見だったことから医学部を受験しました。山口大学医学部に入学し,最初の2年間は谷澤先生もご存知の通り山口市内のキャンパスで過ごしました。