近年,ヒトパピローマウイルス(HPV)関連中咽頭癌の存在が明らかとなり,中咽頭癌の診断治療にパラダイムシフトが生じている。HPV関連癌は,従来のHPV非関連癌と比較して,予後をはじめとする臨床病理学的特徴が明らかに異なる独立した疾患であることが明らかとなってきた。そのため第7版 UICC/AJCC TNM分類ではHPV関連中咽頭癌の予後予測が正確にできないことが判明し,今回のTNM分類改訂にあたっては中咽頭癌の分類において大きな変更が加えられた。本稿では第8版における中咽頭癌のTNM分類について,変更点を中心に概説した。主な変更点は,HPV感染の代替マーカーであるp16免疫染色で分類したp16陽性中咽頭癌とp16陰性中咽頭癌が別々に分類されたこと,p16陰性中咽頭癌のN分類に節外進展の概念が導入されたことの2点であるが,従来と比べてかなり複雑な分類となっている。新しい分類が本邦の症例にも有用であるか,また手術を中心とした治療法を選択した場合にも有用であるかなど今後の検討も必要である。