自己免疫性膵炎(AIP:autoimmune pancreatitis)はしばしば閉塞性黄疸で発症し,時に膵腫瘤を形成する特有の膵炎である。原因は不明であるが,高γグロブリン血症,高IgG血症,高IgG4血症や良好なグルココルチコイド(GC:glucocorticoid)反応性などより,その病態に自己免疫機序の関与が考えられている1)。病理組織学的には導管周囲を中心とする著しいリンパ球および形質細胞の浸潤と,多数のIgG4陽性形質細胞浸潤,花筵状線維化,閉塞性静脈炎を特徴とする。21世紀にはいり病態の解明が進むと,同様の病理組織学的特徴を有する病変(硬化性胆管炎,涙腺・唾液腺炎,間質性腎炎,後腹膜線維症など)がAIPと合併することが明らかになり,これらを「IgG4関連疾患(IgG4-RD:IgG4-related disease)」として包括する新たな疾患概念が確立し2),現在,AIPはIgG4-RDの膵病変(AIP1型)と考えられている。AIPを含むIgG4-RDにはGCが奏功し,臓器腫大や機能障害は治療開始後,速やかに正常に復することが多い。しかもAIPは自然寛解例も存在し,予後は良好な疾患と考えられていた。しかし,長期観察例の増加により,再燃を生じやすいことや,膵石灰化・膵萎縮を伴う慢性膵炎への移行が報告され,診療に際して長期予後を念頭に置いた対応が必要である。