はじめに  精神医学的問題を有する症例の運動器症状の診断や治療は,ときに難渋する。腰痛,下肢のしびれや痛み,間欠跛行を訴える腰部脊柱管狭窄では,器質的病変による症状が主体なのか,非器質的要因の関与が大きいのか,判断に迷うことがある。そして,画像を中心とした診断だけでは,主体となる病態を見誤る可能性がある。特に,慢性的に症状が経過している症例では,手術適応の有無や手術時期についての判断が難しい。  本稿では,これまでに経験した精神医学的問題を有する腰部脊柱管狭窄で手術時期決定に難渋した教訓的な症例を提示し,診療のポイントについて考察する。