「要約」糖尿病ではポリオール代謝経路が持続的に活性化しており,アルドース還元酵素(AR)によりグルコースはソルビトールに変換される。ソルビトールは糖尿病合併症の原因の1つと考えられ,これまで研究が進められてきた。近位尿細管では,ソルビトール脱水素酵素によってソルビトールはフルクトースに変換され,フルクトースはケトヘキソキナーゼとして知られるフルクトキナーゼによって代謝される。フルクトース代謝過程では,ATPの消費,炎症性サイトカインの発現や酸化ストレスの増大などが惹起される。近年,著者らや他の研究グループは,尿細管間質障害の発症や慢性腎臓病(CKD)の進展に,経口的に摂取されたフルクトースにより惹起された有害事象が関わることを見出している。そこで著者らはストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病モデルを用い,食餌からの過剰なフルクトース負荷がない状態で飼育した野生型マウスと,フルクトースを代謝することができないフルクトキナーゼ欠損(khk-/-)マウスを比較検討することにより内因性フルクトースの影響を解析し,フルクトース代謝阻害が糖尿病性腎症の進展を防ぐことができるか否かを検討した。