Summary 近年の臨床疫学調査により,これまで推定されていた以上に慢性腎臓病は心不全に高頻度に合併することが明らかとなった。慢性腎臓病と心不全の合併は,治療を困難にするだけでなく予後を悪化させる。従来から,心拍出量低下による腎血流量低下が最も重要な因子と考えられていた。しかしながら,むしろ心不全によるうっ血,中心静脈圧上昇が腎機能低下のより重要な因子であることが報告されるようになった。さらに,このような心不全・腎機能障害の血行動態による悪循環だけでなく,神経体液性因子が関与し相乗的に病態を悪化させると考えられている。少しずつ心腎症候群の病態が明らかにされつつあるが,まだ不明な点が多く,有効な治療法も確立していないのが現状である。今後,病態の解明および治療法の確立を目指し,さらなる研究の進展が必要である。