Summary 利尿薬の歴史は古い。はじめは16世紀頃に水銀が用いられたが,副作用が強く使用困難であった。20世紀になると,サルファ薬に利尿作用があることが認められた。これは炭酸脱水酵素阻害の結果であることがわかり,その阻害薬が合成されるようになった。それ自体の利尿効果は弱かったが,スルホンアミド系化合物のなかから利尿効果の強い化合物を探索するなかでサイアザイド系利尿薬,ループ利尿薬が開発された。これにより有効性の高い信頼できる利尿薬が使用できるようになり,現在の医療を担う重要な手段の一部となっている。一方,この流れとは別に,1957年頃からアルドステロンの抑制によってNa利尿を得ようとする研究も進み,抗アルドステロン薬も開発されてきた。当初開発された薬剤は性ステロイド系への影響が強いものであったが,近年ミネラルコルチコイド受容体選択性のエプレレノンが開発された。これは,特に心不全で有効性が高く評価されている。なお,これらの利尿薬はすべてNa利尿によるものであるが,これだけでは低Na血症の進行に対しては対応できない。これを解決するためには水利尿薬が必要であり,バソプレシン受容体拮抗薬の開発が進められてきた。1992年にバソプレシンV2受容体拮抗薬が合成され,その後臨床研究が進み実用化された。今やさまざまなオプションが選択可能な時代となっており,各種病態に適した利尿薬を用いることが臨床現場で求められている。