クリプトスポリジウム症はクリプトスポリジウム属の原虫による感染症であり,本邦では流行地域の渡航者下痢症のほかに同性間性交渉を行う男性間でも流行することがある。とくに免疫不全者においては重症化しやすく,AIDS指標疾患の1つとなっている。一方で,AIDS指標疾患としての頻度は1%未満と比較的稀である1)。クリプトスポリジウム症に特異的な症状や検査所見はなく,鑑別にとして挙げられなければ診断に難渋する場合がある。今回,炎症性腸疾患疑いで精査・治療されたのち,最終的にクリプトスポリジウム症の診断からHIV感染症とAIDSの診断に至った1例を経験したので報告する。