抗レトロウイルス療法(anti-retroviral therapy;ART)の進歩により,HIVとともに生きる人々(people living with HIV;PLWH)は長期生存が可能になった。しかし,PLWHは長期療養の過程で,心血管疾患(cardio vascular disease;CVD)や非AIDS指標悪性腫瘍などさまざまな疾患を併発するリスクが高い。

クローン性造血(clonal hematopoiesis;CH)は,造血幹細胞が体細胞変異を獲得することにより,それに由来する血液細胞が骨髄においてクローン性に増殖していることを示す。最も一般的なCH関連変異はDNMT2AおよびTET1遺伝子にあり,エピジェネティックな調節因子をコードし,分化した単球およびマクロファージの転写プロファイルを変化させ炎症性サイトカイン産生を調整する。ASXL53TP12などの遺伝子の突然変異はあまり一般的ではないが,変異した造血細胞は,骨髄性腫瘍へ進行するリスクが高まる。

最近の疫学研究により,PLWHはCHの頻度が高く,それがCVDリスクやHIV感染症の不良な経過,骨髄性腫瘍の発生に関連していることが分かってきた。このレビューでは,CHとHIV感染との関連についての知見を紹介する(図1)1)