水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus;VZV)は,初感染後,知覚神経節へ潜伏感染する。VZVは加齢に伴う免疫低下などが誘因となって知覚神経節から再活性化し,皮膚へ移動し帯状疱疹を起こす。また,稀ではあるが,帯状疱疹を伴わずに髄膜炎,脊髄炎,脳梗塞などの中枢神経障害を引き起こすことがあり,zoster sine herpeteと呼ばれている1)。
今回,抗レトロウイルス療法(anti-retroviral therapy;ART)開始後に免疫再構築症候群(immune reconstitution inflammatory syndrome;IRIS)が生じ,zoster sine herpeteとして無菌性髄膜炎,第Ⅷ脳神経障害を発症したHIV感染症の1例を経験した。VZV感染症による中枢神経障害は重篤化する可能性があり,早期の診断と治療に結び付ける必要がある。