2022年4月20日 夕刻,Cold Spring HarborのGrace Auditoriumには多くの研究者が集っていた。4日間にわたる逆転写酵素発見50周年記念シンポジウムの始まりである(図1)。1970年にHoward Martin Temin博士(1934〜1994年,享年59歳)による逆転写酵素の発見1)はRNAはDNAから一方通行で「転写」されるというセントラルドグマを文字通り「逆」にする大発見であった。そしてわずか5年後の1975年にTeminはDavid Baltimore博士2)とともにノーベル賞を受賞した。研究業績から受賞までの平均年数が20年といわれるノーベル賞において3)これは異例の速さであり,逆転写酵素の発見がいかに画期的なものであったかを示している。そして逆転写酵素の発見はDNAプローブ等の研究技術や,レトロウイルス,レトロトランスポゾンなど多くの新たな研究領域への扉を開くこととなった。1983年のHIVの発見4)に大きく寄与したことはいうまでもない。
逆転写酵素発見から50年目は正確には2年前の2020年になる5)。承知のように2020年の世界は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックに沈んでおり,とても記念シンポジウムを開催できるような状況ではなかった。もちろんwebでの開催という選択肢もあったようだが,主催者のJohn Coffin博士(Taft University)は対面での開催に強くこだわったという。それから2年後の2022年の春,待った甲斐もありTemin博士に直接的,間接的に関わりのある研究者が50名以上集った。そして参加者たちの歓談の輪の中には2人のノーベル賞受賞者David Baltimore博士(California Institute of Technology:1975年Teminとともに受賞),Harold Varmus博士(1989年にレトロウイルスの発がんで受賞6))とともに世界で最初の逆転写酵素阻害剤ジドブジン6)を開発した満屋裕明博士の姿もあった。筆者は幸運にも満屋博士とともに,この記念すべきシンポジウムに参加をすることができたので,シンポジウムの状況を共有したい。
逆転写酵素発見から50年目は正確には2年前の2020年になる5)。承知のように2020年の世界は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックに沈んでおり,とても記念シンポジウムを開催できるような状況ではなかった。もちろんwebでの開催という選択肢もあったようだが,主催者のJohn Coffin博士(Taft University)は対面での開催に強くこだわったという。それから2年後の2022年の春,待った甲斐もありTemin博士に直接的,間接的に関わりのある研究者が50名以上集った。そして参加者たちの歓談の輪の中には2人のノーベル賞受賞者David Baltimore博士(California Institute of Technology:1975年Teminとともに受賞),Harold Varmus博士(1989年にレトロウイルスの発がんで受賞6))とともに世界で最初の逆転写酵素阻害剤ジドブジン6)を開発した満屋裕明博士の姿もあった。筆者は幸運にも満屋博士とともに,この記念すべきシンポジウムに参加をすることができたので,シンポジウムの状況を共有したい。