HIV感染症の予後の改善に伴い,患者の高齢化が問題となってきている。それに伴い,HIV診療も抗ウイルス療法によるHIVの治療だけではなく,高血圧,糖尿病,心血管疾患など加齢に伴う各種合併症のマネジメントの重要性が増加してきている。
骨粗鬆症は通常は高齢女性にみられるが,HIV感染症自体が骨代謝に影響を与えること,抗HIV薬自体の有害事象として,あるいは他の薬物との相互作用の結果として,若年男性であっても骨塩量が減少している症例が多いことが既知であり,HIV診療においては今後,骨粗鬆症のマネジメントが重要になってくると考えられる。
本稿では,偶発的にみつかった多発椎体骨折により,重度の骨粗鬆症と診断された40代男性の症例を提示する。