【症例】
30歳代後半,男性。
主訴:口唇・舌潰瘍。
現病歴:ニューモシスチス肺炎(pneumocystis jirovecii pneumonia;PCP)を契機にHIV感染症と判明した。PCP治療10日目から舌痛および舌白苔を認め口腔カンジダ症としてフルコナゾール(fluconazole;FLCZ)100mg/日で治療を開始した。FLCZ 5日目に口唇と舌に潰瘍病変が出現し,徐々に潰瘍病変は増大傾向となったため,FLCZ 8日目にFLCZは無効と判断した。単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus;HSV)による潰瘍病変と診断し,FLCZは中止しビダラビン軟膏の塗布で治療を開始した。しかし,5日間塗布したが改善しないため,バラシクロビル500mg2錠を1日2回に変更した。それでも潰瘍病変は改善を認めなかった。
既往歴:HIV感染症は未治療,PCP治療中。
身体所見:バイタルサイン 発熱なし。口唇・口腔:口唇部に潰瘍病変があり血餅が付着,舌に潰瘍病変あり。頸部:リンパ節触知せず。その他特記事項なし。
検査所見:〈血算〉WBC 4.84×10³/μL(Neu 94.0%,Lym 1.0%),Hb 11.9g/dL,Plt 19.1×10⁴/μL。
〈生化学〉T-bil 0.8mg/dL,γ-GTP 186 IU/L,LDH 269 IU/L,AST 51 IU/L,ALT 59 IU/L,BUN 20.9mg/dL,Cr 1.48mg/dL,Na 138mEq/L,K 3.9mEq/L,CRP 0.51mg/dL。
〈HIV〉CD4 6/μL,HIV-1 RNA 34万copies/mL。
〈感染症〉CMV IgG陽性。