HIV-1の逆転写酵素の138番のアミノ酸は,非核酸系逆転写酵素阻害剤であるリルピビリンの耐性変異が生じる場所であるが,この部位はヒト白血球抗原(HLA)-B*18拘束性細胞傷害性T細胞(CTL)の主要なエピトープの1つに含まれ,138番目のアミノ酸変異はHLA-B*18拘束性CTLの逃避変異でもある。16ヵ国の未治療HIV-1感染者の逆転写酵素の138番のアミノ酸を解析したところ,HLA-B*18陽性者は陰性者に比べて138番のアミノ酸変異の頻度が有意に高かった。さらに,HLA-B*18の頻度が高い国では低い国に比べて,HLA-B*18陰性者における138番のアミノ酸変異の頻度が有意に高かった。HLA-B*18陽性者の免疫能で選択された138番のアミノ酸変異が,HLA-B*18陰性者に伝播しているためと考えられる。リルピビリンは,曝露前予防(PrEP)の候補薬の1つに挙げられているが,未治療感染者に138番のアミノ酸変異が拡がっている地域もあり,注意深い検討が必要である。
「KEY WORDS」リルピビリン,細胞傷害性T細胞(CTL),逃避変異,ヒト白血球抗原(HLA),薬剤耐性変異