HIV感染症の治療の進歩は著しく,1985年,満屋裕明博士らが米国立癌研究所で世界最初の抗HIV薬ジドブジン(AZT)を報告して以来,多くの抗HIV薬が開発されてきた。1996年にカナダのバンクーバーで開催された第11回国際エイズ会議では,抗HIV療法のガイドラインが提案され,その中で多剤併用療法(以前はhighly active antiretroviral therapy[HAART],最近ではantiretroviral therapy[ART])が標準治療として提示された。米国保健福祉省(Department of Health and Human Services;DHHS)はHenry J. Kaiser家族財団とともに招集したPanel on Clinical Practices for Treatment of HIV Infectionが作成し,1997年11月に初めて発表した『成人および青少年HIV-1感染者における抗レトロウイルス薬の使用に関するガイドライン』(以下,ガイドライン)以来,ガイドラインを毎年のように改訂してきた。最近では2017年10月に改訂版1)が提示された。この21年間での大きな変化としては主なキードラッグがプロテアーゼ阻害剤(protease inhibitor;PI)からインテグラーゼ阻害剤(integrase strand transfer inhibitor;INSTI)へと変わったことと,1日の剤数が数剤を数回から,1回2剤を経て1日1回1剤となったことと言える。かつて多く認められた副作用も格段に少なくなった。抗ウイルス効果に優れ,飲みやすくなったARTで血中のウイルス量(viral load;VL)も測定限界値未満を持続できれば他への感染も無視できるくらいになった。HIV感染症は治療で慢性の,あるいは感染を予防できる疾患に位置づけられる疾患となった。本項ではガイドライン改訂上のポイントに焦点を絞って概説する。一部意訳した部分があることをご了承頂きたい。詳細は是非,ガイドラインを一読されることを勧める。
ガイドライン改訂のPoints
DHHSガイドライン改訂のポイント
掲載誌
HIV感染症とAIDSの治療
Vol.9 No.1 11-19,
2018
著者名
白阪琢磨
記事体裁
抄録
疾患領域
アレルギー・免疫
/
感染症
診療科目
その他
媒体
HIV感染症とAIDSの治療
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。