パーキンソン病(PD)の診断基準を満たす運動症状が出揃った時期には,黒質緻密部のドパミン神経細胞数や約50%減少,機能は約80%を失っている1)。臨床的にPDと診断後,L-ドパ製剤をはじめとした内服治療は奏効するが,ドパミン補充療法は対症的な治療にすぎないのでPDそのものの進行は抑制できない。
つまり,私たちが初期PDと診断したときには,すでにドパミン細胞の半数が消失しており,治療対象とすべき病態はすでに半ば以上進行している。神経保護治療や疾患修飾治療薬を開発できたとしても,この状態で治療を開始しても有効ではない。
PDの根本的な治療を行うためには,現在の臨床診断の時期よりももっと早期に診断する必要があり,その診断のためのバイオマーカーが必要である。
この運動症状発症以前のPDを研究対象として明確にするために,Movement Disorders Society (MDS) が「prodromal PD」という概念を提唱した。

本企画は問題点をよりクローズアップすることを目的としており,このテーマに対して,あえて一方の見地に立った場合の議論であって,必ずしも論者自身の確定した意見ではありません。

・「Yes」の立場から/西川典子
・「No」の立場から/馬島恭子