「1 母体予後のためには非妊娠期と同等の治療を」症例対照研究によると,妊娠期乳癌は進行例が多く予後不良とされており,非妊娠期乳癌と同じ基準で全身療法を検討すべきと考えられています。中絶によって母体予後が改善されるという科学的根拠がないことを伝えたうえで,複数の治療選択肢を提示し,患者の意思決定をサポートする必要があります。妊娠中の化学療法の長期安全性は確立されていませんが,妊娠中期以降で化学療法を行った場合の自然流産・先天奇形などの短期的リスクは1.3%と,化学療法曝露がない場合と同等です。複数の大規模コホート研究で子宮内胎児発育遅滞・前期破水・早産などのリスクは増加すると結論づけられてはいますが,胎児への影響は比較的少ないと認識されています(図1)。