本邦における高齢胃癌患者は増加の一途を辿っており,医療の需要が高まっている。しかしながら高齢者の標準治療は確立しておらず,治療開発もほとんど行われてこなかった。高齢者は加齢に伴う生理機能の低下,複数の併存症を有すること,高い服薬率および薬剤相互作用による効果の減弱や有害事象の増加などに加え,家庭環境(独居など),経済力の低下,認知機能の低下など複数の脆弱的要因を考慮する必要がある。このように脆弱性の面で多様な集団であることが治療開発を困難にしている一因であり,脆弱性を一般化出来る評価尺度の開発が高齢者医療にとって重要な課題である。高齢胃癌患者を対象とした実臨床のアンケート調査ではTS-1単剤治療やTS-1+CDDP(SP)療法が多く選択されていた。しかしながら国内の大規模retrospective studyからはSP療法がTS-1単剤治療に明確に優るという結果は得られなかった。このため毒性の低いTS-1単剤治療は高齢者における重要な治療選択肢であると考えられる。
「Key words」高齢者胃癌,多様性,TS-1,CDDP,L-OHP
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