「Summary」 痔瘻癌は比較的まれな疾患で, 早期診断が困難な例が多い. 痔瘻癌の病理学的特徴についてはこれまで病理医の立場から述べられている報告は少ない. 痔瘻癌の診断基準は, 組織学的に痔瘻から癌が発生したことを証明することが実際には困難であるため, 臨床的な所見を重視した基準が一般に用いられている. 本邦では以下の基準, (1)痔瘻が長期にわたって症状を繰り返している(10年以上), (2)痔瘻の部分に疼痛, 硬結があること, (3)粘液様分泌物がある, (4)直腸肛門の他の部位に原発性の癌がないこと, (5)痔瘻開口部は肛門管の陰窩と交通があること, を用いることが多い. 痔瘻癌の組織発生については炎症性発癌が示唆されているが, 分子異常についてはほとんど明らかにされていない. 組織発生においても肛門腺由来の癌との鑑別など未解決の部分も多い. 痔瘻癌の組織像の多くは粘液癌であるが, 腺癌や扁平上皮癌もみられる. 痔瘻癌は壁外性に発育し, 深達度も深いことが多く, 進行期では進んだ例が多いとされるが, 予後については大腸癌と比較しても不良ではないとする報告と不良とする報告がある. 痔瘻癌の術前病理診断も困難なことが多く, 生検陰性例がしばしば経験されることも診断を困難にしている. 痔瘻癌の病理については不明な点も多く残されており, 今後の発展が期待される.
特集 炎症と大腸癌
痔瘻癌の病理
Pathological aspect of fistula cancers
掲載誌
大腸癌FRONTIER
Vol.6 No.2 46-52,
2014
著者名
菅井 有
/
上杉 憲幸
/
杉本 亮
/
石田 和之
記事体裁
抄録
疾患領域
消化器
/
アレルギー・免疫
/
癌
診療科目
消化器外科
/
一般外科
媒体
大腸癌FRONTIER
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。