「Summary」 潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis ; UC)の発癌過程では, 感染因子, サイトカイン, 活性酸素などが腫瘍関連遺伝子の(エピ)ジェネティックな変化や腫瘍関連マイクロRNAの発現変化を引き起こす. UCの大腸癌発生率は一般人よりも高く, その予後を左右する因子として大腸癌の発生があげられるが, その前癌病変(dysplasia)は炎症を背景にした境界不明瞭な平坦病変が多く, 発見は容易でない. また, dysplasiaは組織異型に乏しいため, 組織診断一致率が低いという問題点もある. 組織診断上重要な点は, 再生異型上皮とdysplasia, low-grade dysplasiaとhigh-grade dysplasia, 散発性腺腫とdysplasiaとの鑑別であり, 各々, 経過観察法や治療法が異なる. 日常の病理診断において, これらの補助的鑑別診断法としてp53免疫染色が最も有用で汎用されているが, p53陰性のdysplasiaを拾い上げに役立つ他の免疫染色法の開発が期待される.