Summary  大腸癌内視鏡切除標本における病理診断は,内視鏡切除後の追加切除の適応を決定する上で重要であり,特に切除断端の診断は慎重に行われるべきであると考えられる。切除断端に関しては,断端陽性と診断された場合においても,追加切除標本で癌組織の遺残が認められないこともしばしば経験され,客観的な診断基準の設定が必要である。加えて,正確な診断を得るためには,切除標本の適切な取扱い,すなわち切除標本の十分な伸展固定や適切な切り出し線の決定が重要であるが,これらは内視鏡医と病理医が共同して行う必要がある。さらに切除された標本には通電による焼灼,熱変性が加わることが,手技の上で避けることのできない現象であるが,断端診断に支障をきたす可能性のある問題と考えられる。  大腸癌内視鏡切除標本の病理診断において,切除断端診断基準の標準化は今後解決すべき重要な問題の一つであり,そのためには症例を蓄積し,遺残および再発率に関するデータを集積し,本邦における基準を確立していく必要があると思われる。