Summary  大腸癌取扱い規約では,種々の組織型が混在するときには,組織標本上で面積的に最も優勢像をもって組織型にするが,WHO分類では,最も分化度が低い成分で評価すると記載されている。それらの違いは,大腸癌取扱い規約では肉眼所見との整合性を考慮しているのに対して,WHO分類では予後の予測を目的にしているところにある。早期癌の組織型をみると,M・SM1癌ではWHO分類で中分化腺癌がやや多くなるが,両者で大きな違いはない。したがって,優位な組織像で判定することに問題はない。大腸癌取扱い規約では,低分化腺癌が主体でない場合は組織型とは別に簇出などの因子を記載し,リンパ節転移の予測因子としている。肉眼所見との整合性を考慮した大腸癌取扱い規約は大腸癌の臨床病理学的検討や発育進展過程の解析を行いやすいものである。今後は組織型の診断基準をより明確にすること,低分化腺癌の亜分類を考慮することが必要である。