近年,高齢者のてんかんが増加しており,認知症との双方向性の関係が注目されている.以前より認知症の最大の原因疾患であるアルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)の認知症進行期において,全身けいれんやミオクロニー発作などのてんかん発作が合併することが知られていた1)が,近年の研究からは,プレクリニカル期や軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)期などの早期AD(認知症の前段階)においても,軽微な焦点意識減損発作,あるいは臨床発作を伴わないsubclinical seizureの併存が多いことが明らかになってきている2,3).一方,難治性側頭葉てんかん患者のてんかん外科切除脳を用いた病理組織学的解析や中年期以降に発症する病因不明てんかん患者の脳脊髄液を用いたADバイオマーカー測定により,ADの病理組織学的特徴であるアミロイドβ蛋白(amyloid-beta protein:Aβ)の沈着やタウ蛋白の過剰リン酸化などの報告が蓄積され,ADとてんかんには共通の背景病態が存在する可能性が指摘されている4,5).
本稿では,高齢者のcommon diseaseである認知症とてんかんのクロストークについて,これまでの臨床研究の報告を中心に自験例も交えて概説する.なお,症例は患者の同意を得たうえで要旨に影響のない範囲で細部を改変した.