年齢,性別
18歳,男性,右利き.
なお,本症例の詳細な記載,考察に関しては文献1を参照されたい.
診断・治療経過
2019年5月中旬頃,視野の右上から左下にかけて長く一本の斜線が入り,線の上下で光景がずれて見えるようになった(図1a).ほかにも,両視野の光景が波打って見える(図1b),視野全体に複数の黒丸が出現するという症状(図1c)も出現し,これらのいずれかの視覚症状を1週間に2,3回の頻度で認めた.また,上記症状に後続して,自分自身の姿を左後ろから見ている,時にそれが自分の前方まで移動するという感覚(体外離脱体験,out-of-body experience;OBE)(図1d)が出現するようになった.いずれの症状もそれぞれ1時間程度持続した.そして,上記症状に続いて頭痛が生じた.一般身体所見,神経学的所見に特記事項はなく,脳波検査では両側後頭部に1回/10~30ページ(1ページ15秒)の頻度で間欠的に徐波を認めたが(図2),2回の脳波検査で,てんかん性放電は認めなかった.
本症例は,視覚症状が多彩であり,症状の持続時間が長く,部分てんかん発作による症状として典型的ではなかった.また,これらの症状は頭痛に先行して出現しており,「国際頭痛分類 第3版」(ICHD-3)2)における前兆のある片頭痛の診断基準(表1)のA~Dすべての項目を満たした.以上より,部分てんかん発作よりも前兆を伴う片頭痛の可能性を考え,ごく少量のバルプロ酸(VPA)50mg/日から加療を開始した.治療開始により視覚症状,OBEの頻度と頭痛の強度はいずれも改善し,1年後には最終的にVPA 150mg/日まで漸増し,上記3種類の視覚症状,OBE,頭痛のすべての症状が消失した.