てんかんのある人にとって就労は,最も関心の高い領域のひとつである.就労は経済的メリットがあるのみならず,病気のある人が社会のなかで責任をもち役割を果たすことで自己肯定感や自尊心を高め,いわゆるリカバリーにつながる.しかし,てんかんのある人の就労率は一般と比べて低い1, 2).この背景には,てんかん発作や併存障害といった医学的側面,てんかんのある人自身の自信欠如,対人関係の困難といった心理的側面,てんかんのある人の就労を支援するための体制の不備や職場の理解不足といった社会的側面があると考えられる.なかでも雇用主のてんかん発作とそれに伴うリスクへの懸念はてんかんのある人を雇用することを躊躇する要因になりえる.雇用主が安心しててんかんのある人を雇うために,てんかんの医学的側面と職場の環境面の両方を考慮に入れたガイドラインが有用と思われる.本邦ではそのようなガイドラインはないが,ドイツではてんかんの雇用に関するガイドライン(ドイツ法定労災保険中央連合会「てんかんおよび初回てんかん発作後の職業に関する評価」,以下「ドイツ職業ガイドライン」)が利用されている.本稿では,このドイツ職業ガイドラインの内容を抜粋し紹介する.なお,ドイツ職業ガイドラインの翻訳は,日本てんかん学会法的問題検討委員会によって行われ,日本てんかん学会ホームページに掲載されている3)