2010年の本誌で「てんかんと脳波─ハンス・ベルガー,ヒトの脳波報告から80年─」の座談会1)を行ってから10年が経過し,その間にてんかんと脳波をめぐって国内外でさまざまな進歩がみられた.日本の脳波研究は戦後急速に発展したが2),1970年代後半以降のCTおよびMRIの画像診断の進歩によって,「脳波は時代遅れの検査で,MRI検査のほうが重要でそれで十分である」との誤った認識が生まれ,1980年代後半から90年代前半にかけて脳波検査が軽視された時期があった.1990年代にはそれまでのアナログ脳波計からデジタル脳波計の時代になったが,アナログ脳波計と同様に紙媒体にペン書き記録する日本独自のハイブリッド脳波計が主流の時期が続いた.ペン書き脳波記録ではわからなかった脳波所見が明瞭に提示され,デジタル脳波の本当の恩恵を受けるようになったのは,ペーパレス脳波計としてパソコン画面ですべてを判読するようになった2000年以降であった(図1).
1990年代から日本国内では臨床脳波教育の充実と重要性が各種関連学会で議論され,日本臨床神経生理学会の教育委員会は,2000年代後半から全国各地で脳波とてんかんの関連講習会を推進した.2015年からはデジタル脳波を駆使したより専門的な「脳波セミナーアドバンスコース」が,全日2日間のANZANスタイル*¹で毎年夏に開催されるようになった.また,2015年には「日本臨床神経生理学会用語集」を改訂し,『デジタル脳波の記録・判読の手引き』を出版し,2019年には『モノグラフ 臨床脳波を基礎から学ぶ人のために』および『誘発電位測定マニュアル』を出版して,臨床脳波検査の標準化を推進した(表1).日本てんかん学会は2006年から年次集会開催時に学会主催の「てんかん研修セミナー」を毎年開催し,脳波とてんかん診療の教育に力を入れている.日本神経学会は2011年から毎年次学術集会時に脳波ハンズオンを開催し,脳波記録と判読技術の教育を推進している.以上の学会主催の研修会や講習会以外にも,2014年からは「ふじさん・てんかん脳波ハンズオンセミナー」が病院と企業の共催形式で,2日間のANZANスタイルで毎年開催されるなど,脳波とてんかんの教育機会が飛躍的に増加した.