てんかんの病因や病態はきわめて多彩であり,これまでに種々のイオンチャネルや細胞活動の異常,シナプス・ネットワークの形成・機能の異常,脳神経細胞の発生や移動の異常,感染・炎症・自己免疫の関与,血液脳関門や脳内ホメオスタシスの破綻,アストログリアの機能障害など,数多く報告されている.しかし結果として,脳神経細胞の情報伝達における興奮/抑制バランスが破綻し過剰興奮が生ずる点は共通する.つまり,主に興奮性神経細胞活動やグルタミン酸受容体伝達の亢進,あるいは抑制性神経細胞活動やγアミノ酪酸(gamma-aminobutyric acid:GABA)受容体伝達の減弱が生じている.
てんかん病態を考えるうえで,このGABAによる抑制性シナプス伝達の理解は欠かせない.脳内におけるそれらの複雑なシステムについては未解明な部分も多いが,臨床医がてんかんをもつ人々の診療を行ううえで,その基本的事項は理解しておく必要がある.本稿ではそのような基本病態について解説するとともに,GABA病態の関与で知られるDravet症候群(Dravet syndrome:DS)について,その病態の多様性を紹介する.なお,GABA受容体は主にGABAA受容体とGABAB受容体が知られている.GABAB受容体はG蛋白共役型の代謝型受容体で,電位依存性Ca²⁺チャネルの阻害やGIRK(G protein-activated inwardly rectifying K channel)やTREK(TWIK-related K channel)と呼ばれるK⁺チャネルの開口促進を介し,神経細胞活動や情報伝達の調整に複雑に関与している.欠神発作への関与も知られており1),てんかんにおいて重要であるが,本稿ではGABAA受容体伝達の変化に絞って解説する.