網膜電図(electroretinogram:ERG)は『眼の心電図』ともいえる検査であり,網膜の機能を客観的に評価できる.心電図は電極を装着して,増幅器で電位変化を記録するのみであるが,ERGは電極を装着して網膜を光刺激する必要がある.刺激光は網膜外層の4種類の視細胞(杆体,青錐体,赤錐体,緑錐体)の外節色素に吸収され,視細胞が過分極する(「過分極応答」と呼ばれる).杆体は暗所視を担い,3種類の錐体は明所での視覚を担当する.反応はシナプスを介して双極細胞(ON双極細胞,OFF双極細胞)に伝達され,さらにアマクリン細胞,神経節細胞とその軸索(axon)を経由して,視神経に至る.視覚情報は視神経から外側膝状体を経由して視覚中枢に到達する.ERGでは,視細胞の反応が下向き陰性のa波として捉えられ,双極細胞とミュラー(Müller)細胞(網膜のグリア細胞)の反応が上向き陽性のb波として記録される1)(錐体a波は双極細胞の反応も含む).アマクリン細胞の電位変化は律動様小波としてみられ,神経節細胞の軸索の光応答はphotopic negative response(PhNR)として記録される.網膜内のニューロンと光反応の網膜内pathwayを図1に示した2)