ドライアイは,眼科領域において最も一般的な疾患の1つである1)。近年のデジタルデバイス使用時間の増加や高齢化の影響で患者数は増加傾向にあり,日本国内では6人に1人がドライアイとされている2)。ドライアイの診断には,細隙灯顕微鏡検査が重要で,特に涙液層破壊時間(TFBUT)は客観的評価が難しく,診察者間で評価に差が生じることが課題であった。このような背景から,診断精度の向上と標準化が求められている。

近年,人工知能(AI)技術が医療分野に広く応用されはじめており,眼科領域では眼底画像の診断にAIが活用されてきたが,前眼部領域,特にドライアイ診断への適用はこれまで遅れていた。これは前眼部画像を撮影できる手軽で標準化された機器が少なく,評価方法が主観的で標準化されていなかったことが原因であった3)-5)

本論文は,これらの課題を解決すべく,スマートフォン型細隙灯デバイスであるSmart Eye Camera(SEC)とAIを組み合わせて,ドライアイ診断の新たな方法を提示したものである。