皮膚は,表皮と真皮,皮下組織に分かれ,リンパ管は,毛細血管とともに真皮に毛細リンパ管として密に配向している。リンパ管は,毛細血管から漏れ出した水分やタンパク,細胞といった不要物を回収するだけでなく,外界の感染源に対する免疫反応を司り,防御反応としても重要な役割を果たしている1)。皮膚に炎症を誘導する外部刺激のなかでも,紫外線(UV)の恒常的な照射は,光老化と呼ばれる皮膚老化症状,たとえば,真皮マトリックスの分解,エラストーシス,それに伴うしわの形成などの老徴を示すことが知られている。紫外線はその波長からA波(315~400nm),B波(280~315nm),C波(280nm 以下)に分類され,オゾン層に遮蔽されるC波を除けば,地上に届く最も短い波長であるB波は,皮膚の炎症を誘導することが知られている2)。本稿では,しわ部位でのリンパ管の構造変化,さらには単回の紫外線B波を照射した後の皮膚炎症におけるリンパ管の機能変化と,その詳細な分子メカニズムについて概説する。
「KEY WORDS」リンパ管,紫外線,炎症,光老化,マトリックス