「2000年以前の風景」長年にわたり,ステロイドホルモンは脳内で合成されることはなく,男性・女性ホルモンは血流に乗って脳血液関門を越えて脳内に侵入し作用するという概念が当たり前であった。1990年代後半に分子生物学が発展して微量のmRNAが測定できるようになって,脳内に多くのシトクロムP450のmRNAが存在することが国際会議で発表されたが,卵巣,精巣,副腎皮質,肝臓の1/100以下であるという報告ばかりで,あまりの低濃度に,ほとんどのP450生化学者は脳での働きは重要性がないものだと考え,研究から撤退していった。このようなネガティブな雰囲気の中でも,1980年代から脳でステロイド合成の研究をしていた開拓者はいて,それはP450研究者ではなく,代謝研究を主にしていたパリの国立保健医学研究機構(INSERM)のBaulieu教授であった(1989年にラスカー賞を受賞)。
「Key Words」海馬,テストステロン,局所合成,神経,記憶
「Key Words」海馬,テストステロン,局所合成,神経,記憶