浅田 薬疹は,かつては薬剤に対するアレルギー反応と捉えられていましたが,近年では多様な機序が働いていることが明らかになってきています.本日は,薬疹に造詣の深い阿部先生と山口先生をお招きし,多様な薬疹の病態,とくに重症薬疹と最近注目されている分子標的治療薬による薬疹に焦点をあてて,お話を伺ってまいります.
まずは山口先生から,薬疹の分類や病態について,概要をお話しいただきたいと思います.
山口 薬疹は,薬剤そのもの,もしくはその代謝産物などで誘引される皮膚粘膜障害であると定義されますが,なかでもいわゆるⅠ型の即時型反応,もしくはⅣ型の遅延型反応のような感作を必要とする薬剤アレルギーが,狭義の薬疹とされてきました.しかし,最近になって,皮膚に高発現するような成分,たとえば上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)阻害薬や,抗ネクチン4抗体のような分子標的薬の薬理作用自体で起こる非アレルギー性の皮膚障害の重要性がいわれるようになってきました.