中原 本座談会では,大気汚染と健康被害について,とくに黄砂,PM2.5とアレルギーに焦点を当てて,アレルギーの専門家である小田嶋先生と杉山先生にお話を伺っていきたいと思います.はじめに環境因子としての大気汚染の歴史や,それによる健康被害について,小田嶋先生から概説をお願いいたします.
小田嶋 戦後は石炭がエネルギー源として多く使われ,高度経済成長期には工場が次々に稼働して,工場から硫黄酸化物などの排出ガスが多く出ました.しかし,日本は早めに対策がとられてきた国なので,今では硫黄酸化物などは問題にならない水準まで下がっています.一酸化炭素などの炭素化合物もほぼなくなり,残っているのは窒素酸化物と,浮遊粒子状物質です.