「はじめに」心不全は不全「心」ではなく,個別の臓器や細胞の異常でもない。自律神経で情報伝達を行う臓器連関フィードバックシステムで維持される循環動態恒常性の破綻である。心不全では自律神経系の調節異常,すなわち交感神経系の亢進・副交感神経系の減弱・動脈圧受容器反射感受性の低下が病態の進展や予後に大きく影響していることは周知の事実である。自律神経系は生体の恒常性を維持する重要なメカニズムであり,脳を中心とするフィードバックシステムで制御されており,特に交感神経は圧受容器・化学受容器・心肺圧受容器・筋肉から脳への神経性入力,さらには種々の液性因子入力を脳が情報処理し,神経として出力する。つまり,脳の機能異常が交感神経の不適切で過剰な活性化を介して心不全の本質的な原因となっているといえる。1999年に九州大学病院での研修医を修了し九州大学大学院医学研究院循環器内科学に入学した私は,「脳」こそが心不全の本質的原因で治療標的であると考え,研究を開始した。
私の研究―My Research―
第10回 自律神経と心不全
掲載誌
Angiology Frontier
Vol.14 No.3 54-57,
2015
著者名
岸 拓弥
記事体裁
抄録
疾患領域
循環器
/
神経疾患
診療科目
糖尿病・代謝・内分泌科
/
神経内科
/
腎臓内科
/
循環器内科
媒体
Angiology Frontier
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。