「Summary」心不全では,心筋における酸化ストレスが増加している。主な産生源はミトコンドリアと考えられ,エネルギー産生とミトコンドリア機能不全,ミトコンドリア由来の酸化ストレスから炎症を含めた反応によってさまざまなリモデリングに関するシグナル伝達を惹起する。ミトコンドリアDNA(mtDNA)の量的・質的維持によるミトコンドリア由来酸化ストレスの制御の可能性も示唆され,新たな治療ターゲットとして期待される。
酸化ストレスが種々の慢性疾患の病態形成と増悪機転に関与していることが知られ,あらゆる心疾患の終末像である心不全においても心筋リモデリングにおいて酸化ストレスが増加していることが知られている。本稿では,心不全における活性酸素増加のメカニズム,病態への意義,治療への応用について,これまでの知見をまとめた。