「心臓リモデリング」慢性心不全は,わが国を含めた先進国における死因の主要なものであり,その発症,進展メカニズムの解明と治療法の開発は,循環器研究において最重要課題の1つである。心臓は心筋細胞,線維芽細胞,血管平滑筋細胞,血管内皮細胞などで構成されているが,慢性的なストレスに曝露されると,細胞,そして心臓全体に構造,形態,機能の変化が生じる。これらの変化をリモデリングと呼び,慢性心不全発症,進展の基盤となるものである。心臓へのストレスは血行力学的負荷を伴い,心肥大がリモデリングの最初に認められる。心肥大,そしてさらに心不全へと至るリモデリング進展には,細胞内カルシウム動態の変化,さまざまなストレスシグナルの活性化,酸化ストレス,エネルギー代謝の変化など,多様なメカニズムが関与する。