「Summary」レニンやプロレニンの特異的な受容体である(プロ)レニン受容体((P)RR)は, 2002年に発見された新しいレニン-アンジオテンシン系(RAS)の一構成因子である. これまで, RASが免疫反応へ関与すること, アンジオテンシン(Ang)IIタイプ1受容体(AT1受容体)がヒトのT細胞, B細胞および単球に発現し, 免疫反応を増強することが報告されている. しかし, (P)RRが免疫系に関与するかどうかは不明である. そこで, われわれは免疫細胞であるリンパ球や単球における(P)RRの発現や機能を検討した. 健常者より採血を行い, ヒト末梢血単核球(PBMC)を分離した. その後, PBMCの(P)RR mRNAの発現, (P)RR蛋白の発現を逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR), ウェスタンブロッティング, flow cytometry, 免疫蛍光染色で評価した. また, 抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連腎炎の組織切片に対しても免疫蛍光染色を行い, 組織に浸潤するリンパ球やマクロファージの(P)RR発現についても検討した. 上記方法にて, 免疫細胞における(P)RRの発現が確認された. また, 腎生検で得られたANCA関連腎炎の組織所見においても, 半月体を形成する糸球体周囲に浸潤するリンパ球やマクロファージに(P)RRの発現を認めた. また, AT1受容体阻害薬, AT2, 受容体阻害薬の使用によりAng IIによる細胞内伝達を阻害したうえでPBMCをレニンで刺激すると, 細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK1/2)経路の活性化とともに, ERK1/2のリン酸化が導かれた. さらに, インターロイキン(IL)-6, IL-10, 腫瘍壊死因子(TNF)-α, インターフェロン(IFN)-γの分泌を確認した. これらサイトカインの分泌量は, 刺激するレニン濃度や時間経過に依存していた. 以上より, (P)RRはヒトリンパ球や特に単球に発現し, その(P)RRは機能性であることが示唆された. ERK1/2経路の活性化やこれに伴うサイトカイン分泌が認められたことから, (P)RRが炎症反応に関わる可能性があると考えられた.