「Summary」特発性肺線維症(IPF)は原因不明の慢性進行性の肺線維症であり, 予後不良の疾患である. 近年, IPFの主病態が炎症ではなく線維化であることがわかり, 炎症性メディエーターであるサイトカイン, ケモカインの解析だけでなく, 肺障害後の組織修復に伴う線維化の病態メカニズムが解明されつつある. また, サイトカインや抗線維化を標的とした治療薬の開発や治療法が考案され, 国内外でさまざまな臨床試験が施行されている. そのようななかで, 本邦では世界に先駆けて抗線維化薬の使用が開始されている. 分子生物学的な新しい知見をもちつつ, IPFを考えていく必要がある. 「はじめに」特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis; IPF)は原因不明の慢性進行性の肺線維症であり, ときに急性増悪を起こして急速に進行する予後不良の疾患である. 確立された治療法はなく, IPFの予後は非常に厳しく生存中央値は3~5年といわれている1).