はじめに  ネフローゼ症候群は,糸球体血管係蹄に存在する蛋白濾過障壁の破綻により高度蛋白尿,低蛋白血症,全身浮腫を生じる疾患群である.小児ネフローゼ症候群の約90%は原因不明の特発性ネフローゼ症候群であり,ステロイド治療により約80%が寛解に至る(ステロイド感受性ネフローゼ症候群)1).組織型では微小変化型が多く,10歳以下では90%,10歳以上では50%以上を占め2)-4),次いで8~10%が巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)である.尿検査との関係では,尿沈渣検査で卵円形脂肪体の検出が重要な所見とされている.また,血尿を認める場合にはFSGSなどの微小変化型以外の組織型を鑑別する必要がある.  本稿では,2006年5月~2011年9月に当院腎臓小児科において診断された特発性ネフローゼ症候群23症例〔うち膜性腎症2例,FSGS1例,性別(男児15例,女児8例),年齢:7.4±5歳}の入院時尿検査所見ついて述べる.  各検査値は平均値±標準誤差であり,23例の尿沈渣所見については,血球類と上皮細胞類は個/HPF(強拡大:400倍で1視野表現),硝子円柱は個/LPF(弱拡大:100倍で1視野表現)で,卵円形脂肪体は陽性率で評価した.有意差検定は,Mann-Whitney U testを用いて危険率p<0.05を有意とした.