小児の顔面骨は成人と比較して、頭蓋冠が相対的に大きく、骨自体に弾性があり、骨縫合が未完成、副鼻腔の発達が未熟であるなど異なる特徴を有している1)。そのため「小児は小さな成人」と考えてはならない。また骨のリモデリング能力が高く、機能的治癒が得られやすい。よって、変位が大きい場合や粉砕骨折以外では、非観血的整復術が第一選択となることが多い。さらに、骨端線損傷による成長障害や、関節軟骨損傷による機能障害に注意を要する。

小児の顔面骨折の発生率は年齢とともに増加し2)、男児で有病率が高い3)。年齢により発生率が上昇する理由としては解剖学的要因と行動的要因が考えられる。解剖学的要因は幼児の頭蓋が顔面に比べ大きいこと、幼児は身長が低いため転倒時の衝撃が小さいこと、副鼻腔が未発達であること、顔面骨がしなやかであること、頬側の脂肪が厚いこと、未萌出の歯によって骨が安定していることが報告されている4)。行動的要因としては、幼児は大人によって厳重に監督されていること、年長になると自転車の使用やコンタクトスポーツ、レクリエーションへの参加が増加すること、思春期では自動車事故や喧嘩などの闘争が増加することが報告されている4)。頻度の高い骨折部位は眼窩、鼻骨、下顎骨である2)3)。本稿では、耳鼻咽喉科医が遭遇する可能性の高い眼窩吹き抜け骨折、鼻骨骨折、プレート固定を要するその他の中顔面骨折について解説する。