世界の主要な国では人口の高齢化が進んでいる。本邦においても2021年の推計値で65歳以上の高齢者が約3,630万人(全人口比28.9%)、75歳以上が1,870万人(14.9%)を占める1)。すなわち、7人に1人が75歳以上ということになる。このような超高齢社会においては、嚥下障害による肺炎が主要な死因の一つになり、2011年には人口10万人当たりの肺炎(2017年以降は誤嚥性肺炎を含む)による死亡率が脳血管疾患を抜いて、悪性新生物および心疾患に次ぐ第3位になった。そして、肺炎による死亡の94%が65歳以上であり2)、その多くが嚥下機能低下に基づくものとされている。嚥下障害による誤嚥のリスクが高い高齢者では、在宅や施設での生活においても大きな制約を受ける。一方、誤嚥性肺炎をはじめとして嚥下障害診療に関連する医療コストの問題もある。このように、高齢者の摂食・嚥下障害は医療的、社会的、そして医療経済的に大きな問題となっている。