令和3年版『高齢社会白書』(令和3年6月11日公表)では、「新型コロナウイルス感染症の拡大による影響について」の項目が設けられ、高齢者の生活や意識に変化が現れていることが国際比較調査とともに報告されている(図1)1)。日本の回答者の結果をみると、「旅行や買い物などで外出することが減った」と回答したのは68.0%、「友人・知人や近所付き合いが減った」は55.3%、「別居している家族と会う機会が減った」は47.3%と、外出や接触を伴う人付き合いがコロナ禍で減少していることが明らかとなった。同時に白書の中では、自粛生活が長期化することで、高齢者の生活不活発を基盤とするフレイル化の進行、いわゆる「コロナフレイル」といった健康二次被害懸念もトピックスとして扱われている。
高齢者に多い耳鼻咽喉科疾患のなかでも難聴は、超高齢社会における最も身近な健康問題の一つであり、社会活動性の妨げになるなど、放置することによる不利益が多くの研究で実証されている。
本稿では、コロナ禍における聞こえの問題や、高齢者の社会的活動や人との交流がwithコロナの生活様式により変化している現況を取り上げる。またコロナ前調査ではあるが高齢難聴者が補聴器を使い始めてどう変化したかを追跡したわれわれの研究結果を紹介し、認知症リスク低減を目指した難聴対策という視点から概説する。