【特集 “非定型”な精神病について】
退行期メランコリー
掲載誌
Schizophrenia Frontier
Vol.12 No.4 29-33,
2012
著者名
古茶大樹
記事体裁
抄録
疾患領域
精神疾患
診療科目
精神科
媒体
Schizophrenia Frontier
「要約」退行期メランコリーは従来, 妄想性うつ病あるいは精神病性うつ病としてうつ病の亜型として扱われてきたが, この類型を躁うつ病圏とみなすかどうかについては歴史的にも数多くの議論があった. 筆者もまた, 退行期メランコリーはその症候学的な特徴から, うつ病とは区別するべきではないかと主張してきた. その中核的な特徴は, 否定的な自己価値感情の高まりと原不安の曝露, 自閉思考と体験構造の変化であり, それが微小妄想としてよく知られた病像を生成する. コタール症候群はその究極的な形である. 加えて, 病識欠如, 匿病, 自殺の危険性がきわめて高いという臨床的な特徴がある. 退行期メランコリーという名称は歴史的に重要である一方, どうしてもうつ病圏を連想させるものである. この類型は原不安精神病というような別の呼称を与えるべきかもしれない. 「はじめに」筆者に与えられたもともとのテーマは「非定型なうつ病」であるのだが, よくよく考えてみるとこのテーマは「定型とは」, 「うつ病とは」という2つの問いに明確な答えがないと論ずることができない.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。