要約  ミトコンドリアの機能異常は多数の臓器障害を生じ,なかでもエネルギー依存性の高い骨格筋や心筋,中枢神経系は障害を受けやすい。この症状精神病としての症状として,意識障害,幻覚や妄想などの統合失調症様の症状,双極性障害,大うつ病性障害,人格変化,認知症など多彩な精神症状が認められる。  ミトコンドリア病はミトコンドリアを通じて母系遺伝するほか,核DNAの変異により生じる場合もある。また,mtDNAに変異が生じた場合,正常mtDNAと細胞や組織内で共存する状態(heteroplasmy)を生じて症状を複雑化する。さらに,臨床表現型が異なる患者間で同一の塩基配列変化が認められることもしばしばあり,臨床表現型と遺伝子型の関係性はいまだ明らかではない。  精神疾患と診断されているなかにもミトコンドリア病が混在している可能性は高く,注意深い観察が必要である。