前回は,過剰な恐れを背景とした一見理由がありそうにしていても実は根拠が希薄だった死者への納体袋の強制と,入院から骨になるまでの患者の密室隔離とその家族への非情な対応について,怒りに任せて書いた.病院への入院を,まるで中世ヨーロッパのHospitalあるいは明治時代のコロリ(コレラ)患者の避病院への収容のように患者とその家族との最後の別れにしてしまっていたことは,21世紀の暗い歴史のひとコマとして後世への記録として残しておくべき事実である.

明治時代につくられた伝染病専門病院1)2).コレラの大流行の際には多くの患者を収容した.

今回は,その入退院隔離の判断に大きく関与したPCR検査にまつわる異様な出来事についてである.副題にある「狂想曲」という言葉は,本来音楽の一形式で自由な楽曲のことをいうが,転じて特定の出来事に対し人々が大騒ぎする様子を揶揄するときにも用いられる.