巻頭言
呼吸器感染症の流行を捉える意義と課題
掲載誌
インフルエンザ
Vol.26 No.1 7-8,
2025
著者名
倉井 大輔
記事体裁
抄録
疾患領域
呼吸器
/
感染症
診療科目
一般内科
/
呼吸器内科
媒体
インフルエンザ
季節性インフルエンザの流行が起こると,医療現場から一般社会生活にまで影響が及ぶ.その流行の規模により,検査試薬・治療薬の不足や,入院病床が確保できないことがしばしば起こる.日本の入院病床の主体は多床室であり,隔離を必要とする感染症患者が増加すると入院病床の確保に苦慮する場面も増える.病床稼働率を高く維持しないと,病院の収益は出にくい構造であり,大部分の病院では感染症患者のための隔離できる病室は限られている.インフルエンザやCOVID-19のような呼吸器感染症が同時に複数流行すると,隔離に使用する個室は不足し,病院での感染症患者の受け入れはきわめて難しくなる.
インフルエンザを含め呼吸器感染症の大きな流行は,入院患者数・死亡者数の増加につながり,医療機関の負担も増大する.特に,パンデミックを引き起こす病原体は,社会生活に大きな影響を引き起こすため,特にその発生に注意をする必要がある.感染症サーベイランスは,感染症の疾病負荷や,流行期に向けた政策判断をするうえで重要な情報になることに加え,新興・再興感染症の発生を早期検出する体制の基礎となる.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。