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血管のメカノバイオロジー
水流が決める臓器左右非対称性の最初期決定
掲載誌
血管医学
Vol.11 No.4 19-24,
2010
著者名
野中茂紀
記事体裁
特集
/
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疾患領域
循環器
診療科目
循環器内科
媒体
血管医学
『Summary』 われわれの体の内臓配置などにみられる左右性は, 発生学的には原腸陥入期の胚が腹側表面にもつノード繊毛の運動に由来する. この繊毛は, 軸が尾側に傾いた, 時計回りの回転運動によって胚体表面に左向きの水流(ノード流)をつくる. ノード流とは回転のキラリティ・背腹軸・頭尾軸といった3つの非対称から流体力学的メカニズムによって創出される左右の対称性の破れであり, ノード流が運ぶ何らかの情報は遺伝子カスケードによって増幅され, その後の非対称な発生が引き起こされる. 実験的にノード流を逆転させると左右性は逆転し, ノード流が存在しないとき左右性はランダムに決まる. 『はじめに』 人体は表面的にはほぼ左右対称だが, 内臓配置は高度に非対称である. この非対称はほとんどのヒトで同じだが, 1万人に1人程度の頻度で逆転(内臓逆位)がみられる. 内臓逆位は, 完全な逆転である限りは健康上とくに問題ない. 一方, 左右情報の混乱は, 無脾症, 大血管転移などの問題を引き起こす.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。