「Summary」消化管上皮欠損は虚血粘膜壊死,癌治療,粘膜の炎症性変化などで生じ,広範囲な欠損が生じると,瘢痕化などの周囲組織への組織障害が強く起きる。炎症性腸疾患や難治性消化管潰瘍では,粘膜障害により,下痢や下血などさまざまな消化器症状を呈する。また,内視鏡治療にともなう食道粘膜欠損では,瘢痕化にともなう狭窄が生じるため,非常に大きな問題になっている。近年,細胞培養技術の進歩により,細胞を用いた再生医療研究が盛んに行われているが,消化管粘膜の再生に関しても,さまざまな研究が行われており,従来の治療法では治療困難とされていた疾患や病態に対する治療効果が期待されている。本稿では上皮細胞培養研究,特に培養上皮細胞シート研究に関して,基礎研究から臨床研究,さらには一般診療まで普及させるための展望までを概説する。