Summary  急性膵炎においては,その発症機構から重症化機構に至るまで,プロテアーゼの活性が大きく関与する。よって,その治療においては,プロテアーゼ活性を制御するプロテアーゼインヒビターが当然のことながら登場する。急性膵炎はプロテアーゼに始まりプロテアーゼに終わる疾病である。本稿では,急性膵炎におけるプロテアーゼとプロテアーゼインヒビターの役割について,発症機構,重症化機構,および,治療の3つの側面に分けて紹介した。発症機構においては,オートファジーによるトリプシノーゲンの活性化と,膵分泌性トリプシンインヒビター(PSTI)によるトリプシン活性阻害の重要性について,重症化機構では,その主体となる腹腔内臓器虚血,自己消化,SIRS/sepsisの3現象のいずれにおいてもプロテアーゼ活性が深く関与することについて,そして,治療においては,各種プロテアーゼインヒビターの投与の意義や膵局所持続動注療法の理論的背景について述べた。