これまでは性染色体がXXかXYにより各々卵巣,精巣が発生し,それで性別のすべてが説明されていた。しかし性別不合が相当数存在することで,ジェンダーアイデンティティ(GI)という概念が提唱され,脳の性が注目されるようになった。つまり,性には内外性器(性腺・性管)の分化と脳の性とが存在し,これが一致するのが異性愛者,乖離するのが性別不合となる。両者の不一致が存在する背景として,両者が決定される時期にずれがあることが挙げられる。すなわち,ヒトでは胎齢2ヵ月までに内外性器の分化がほぼ終了するが,脳の性の分化は妊娠後半期に起こる1)。しかも後者は前者とは独立して進行する。性別不合の脳はどのようにして形成されるかを考えるために,本稿では脳の性の形成機序について解説する。
連載
脳におけるエストロゲンの見えざる作用 第36回
―性別不合の脳の形成のしくみ―
掲載誌
HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY
Vol.30 No.1 74-79,
2023
著者名
武谷 雄二
記事体裁
抄録
/
連載
疾患領域
代謝・内分泌
診療科目
産婦人科
/
糖尿病・代謝・内分泌科
媒体
HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。